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ブルーライン[やがて恋を知る]

WEB掲載分に書き下ろしを加えて文庫化! やがて恋を知る

葵居ゆゆ

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【お試し読み】やがて恋を知る

 いけないことだ、という意識が、セックスにはついてまわる。
 他人は違うのかもしれない。だが、安曇春之にとっては昔から――級友の間で誰が好きだとか告白して振られただとか、その手の話題が頻繁になった頃から、セックスも恋愛もひとしく「いけないこと」だった。後ろ暗い、悪いこと。背徳的なこと。人に知られてはならないこと。知られれば罰の待つ、罪深いこと。
 いけないことだ、とわかっているのに、いつもこの家のチャイムを鳴らすのと同時にスイッチが入る。ドアの向こうで待ついけない時間に期待で胸が震えて、息苦しくなって、早くほしくてたまらなくなる。
「……っ」
 綺麗に片付いたリビングの一角で、安曇は一人熱いため息を漏らした。高く上げて拘束された両手が痺れてだるいのだが、それさえもどかしい快感のようだ。耳を澄ますとバスルームからはシャワーの音が聞こえて、安曇は膝を擦りあわせた。
 裸の太腿がこすれ、もう勃起した性器が揺れる。尻の奥のすぼまった場所も息をするたびにひくついていて、杉沼がシャワーを浴び終えて戻ってきたら全部見られるのだと思うと背筋がぞくぞくした。
 裸になって手錠でつながれただけで興奮するのかおまえは、と言われるだろうか。
 軽蔑しきった眼差しで見下ろされるだろうか。
 少しでもペニスを刺激できないかと身じろぎながら、安曇は耳をそばだてる。早く杉沼に来てほしかった。
「……ん、っ」
 我慢できずに再度ため息をついたとき、バスルームのドアの開く音がした。
 出てきた杉沼裕文は入る前と同じく、ワイシャツとスラックスを身につけていた。髪もきちんと撫でつけられ、襟元こそボタンがひとつ外されているが、それだけだった。
「なんだ、勃ってるのか。おまえは本当にこういうのが好きなんだな」
 性的な行為を予感させる余地のない、会社帰りと変わらない格好のまま、杉沼は安曇の前まで来て軽蔑するように目を細めた。
「見せてみろ」
 低く張りのある声で命じられ、安曇は一瞬感じた落胆を忘れて喉を鳴らした。震えそうになる脚を、ゆっくりとひらく。
「あ、あ……」
 視線が胸から股間へとすべるのを感じて、自然と声が漏れた。ぷくん、と先走りがにじむのがわかる。ぬるい液体の伝う感触に震えながら、安曇は杉沼を見上げた。
 目があうと、杉沼は顔をしかめる。
「いやらしい目で見るな。どんどん欲張りになるな、おまえは」
「……すみません……」
「最初の頃はまだ可愛げもあったのにな。――昔は、おとなしくて謙虚なふりをしていただけか」
「……っ」
 冷たく苦々しい口調で言われ、安曇は背筋を強張らせた。「昔」というのは学生時代のことだろう。珍しく持ち出された過去のことに、快感とは別種のひやりとするような危機感がこみ上げる。
 もうこんな取引は終わりだ、と言われてしまうのではないかという不安は、けれどすぐに霧散した。杉沼が安曇に背を向けて、寝室から黒い箱を持ってきたからだ。横長の抱えるほどある箱の中身がわかっている安曇は、脚をひらいたまま身もだえた。
 ああ、今日はなにから使うのだろう。なにで、苛めてもらえるのだろう。どれほど長く、我慢させられるのだろう。
 期待で息を荒らげてしまった安曇を横目で一瞥し、杉沼は箱の中から事務的に道具を取り出した。バラ鞭、乗馬鞭、クリップ、首輪、ローター、ディルド、コックリング。いかがわしい道具を手に取りながら、杉沼は興味のなさそうな顔を崩さず、結局どれも並べただけで再び安曇の前に立ち、高い位置にあった手錠を外した。
「先にしゃぶらせてやる。嬉しいだろう?」
「う……嬉しい、です」
「ねだってみろ」
「……義兄さんのを、おしゃぶりさせてください。たくさん、飲みたい、です」
 じわりと唾液が湧いてきて、安曇は膝をついて陶然と杉沼を見上げた。見下ろしていた杉沼があざ笑うように唇の端を歪める。
「恥ずかしげもなくよく言えるな。少しは躊躇え、淫乱が」
「申し訳ありません……」
「そんなにほしければ自分で取り出してくわえていい。くわえたら手は使うな」
「はい」
 従順に頷いて、安曇は左手を伸ばして杉沼のスラックスに触れた。余計な場所に触って叱られないよう、注意深くファスナーを下ろして、下着の中から杉沼の分身を取り出すと、それは彼の気持ちを表すように、少しも反応していなかった。
 力ない性器を口の中に迎え入れ、半ばまで含んでから安曇は目を閉じて顔だけを前後させた。勃起していないペニスに口だけで刺激を与えるのは難しかったが、早く反応してくれるよう、できるだけ唇をすぼめて、扱き、吸い上げる。
 やわらかな性器の表面が唾液でこすられるぬめった音で、安曇はもうたまらなくなる。叱られるのを承知で自分の身体に手を這わせながら、舌で杉沼の感触を味わった。スマートな杉沼の外見を写したように、性器もかたちがよく、育つと長さもたっぷりある。喉の奥まで突き入れられると苦しくてえずきそうになるが、安曇はそれも好きだった。この張りつめた杉沼のものが下のあそこから入れられたら、どれほど深くまで犯されるか、たやすく想像できるから。
「ん、むっ……っ、ん、」
 じゅるっとすすり上げた唇の端から唾液が零れた。安曇は自分の胸に触ってしまう。右の乳首の回りをぐるりと撫でて、勝手に尖ってしまっている突起をきつく摘む。じぃんと痺れて尻をくねらせると、「よせ」と鋭い声がした。
「勝手な真似をするな」
「んんっ……みませ……っ」
 くわえたまま謝罪して、それでも安曇はもじもじと身体を動かした。
 自分がとても悪い生き物になった気分だった。お情けでしゃぶることを許されたのに、それだけでは我慢できずに自慰をしてしまう、厭わしい生き物だ。
 やめなければいけないことをやめられない、駄目な人間だ。
 救いがたい、と自分をけなしながら、安曇はいっそう口に力を入れた。なかなか育たない杉沼のものを一心に舐めねぶる。先端だけをくわえて舌先で舐め回すと、ぴくんと力を持つのがわかって、わざとらしく音をたてて吸いついた。
 途端、喉の奥までそれが侵入してきて、安曇は身体を竦ませた。
「自分の好きなところばかり舐めるんじゃない。もっと、奥まで入れるんだ」
「…………っ」
 弾力のある性器が上顎をこすって、安曇はたまらずに手を上げた。縋るように杉沼のスラックスを掴み、何度も出し入れされる衝撃に耐える。
「……っ、んう、ぐ、」
 気持ちよかった。苦しさとこみ上げる快感で涙がにじみ、突かれる喉からは呻き声がひっきりなしに出る。
「はしたない顔だな。気持ちいいのか? 口の中をペニスで犯されるのが好きか」
 侮蔑する台詞を聞きながら、安曇はどうにか頷いた。声が出ないかわりに、そうですそのとおりです、と仕草で訴える。
 杉沼が強引に抽挿するそれに舌を添え、自分から唇をすぼめて幹をこする。そうする一方で、左手を自分の股間に伸ばした。剥き出しの性器に指を巻きつけて、薬指に嵌めたままの結婚指輪をこすりつけながら大きく動かすと、このあとの叱責を予感して身体が震えた。
 いけない、ことなのだ。
 だから罰される。
 だから、罰してほしい。
「ん、……う、っ、……っ」
 喉を鳴らして杉沼のものをすすり上げ、淫液の湧いてくる自分の鈴口を指先で押さえ込む。自ら焦らすように刺激してたまらずに身をくねらせると、舌打ちが聞こえた。

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