WEBマガジン{fleur}フルール

登録不要&閲覧無料!! 男性同士の痺れるような恋愛(ボーイズラブ)が読みたい貴女へ。ブルーライン
トップ ブルーライン 上下の沙汰もネコ次第 【お試し読み】上下の沙汰もネコ次第

ブルーライン[上下の沙汰もネコ次第]

「……え? まだ俺に挿れるつもりだったの?」同級生カップルの上下攻防戦☆お試し読み連載開始! 上下の沙汰もネコ次第

栗城偲

前へ ← 1 2

【お試し読み】上下の沙汰もネコ次第

「なんで? やだ。やめない」
 彼の声が熱を孕んでいて、反射的に身を竦ませた。
 ──……こいつの、こういうとこちょっと怖いんだよ! いつも!
 いつもは大きい図体の割に穏やかで柔らかな言動なのに、こういうときばかり、映次は固く低い声を出す。なんだか威嚇されているようで、それを気に食わないと思うのに、つい萎縮してしまう自分が情けない。
 更に増やされた指が、累の内壁をぐるりと掻きまわす。また嫌な部分を撫でられて、累は映次の胸をたまらずに押し返した。
「や……」
「そんな可愛い声出しても、だめ」
 誰が可愛い声出してるっつうんだよばっきゃろー、ぶん殴るぞ、と怒鳴りたいところであったが、口を開けば変な声を漏らしてしまいそうで、大人しく唇を噛んで堪えた。体が、小さく震えるのがわかって、行き場のない気持ちになる。
「んっ!」
 先程までよりも強く、感じる箇所を押されて、無意識に腰が跳ねてしまった。
 咄嗟に逃げようとした体を押さえつけるように、いつの間にか兆していた性器を握られる。中と外を同時に弄られ、累は小さく悲鳴を上げた。
「あ……ぁっ、うー……!」
 映次の指は、器用に累の弱点を責めたてる。累はまだ映次の感じる部分がわからないことが多いのに、この数年で体の隅々までを知られたような気分だ。
 括れた部分を指先で捏ねられ、快感を逃すようにシーツを強く掴む。けれど責め続ける指に、あっという間に追い立てられた。
「ん、ん……っ!」
 映次の大きな手に与えられた快楽に、累は堪え切れず吐精する。軽く仰け反りながら達し、ベッドに身を沈めた。
「……はぁ……」
 ほっと息を吐いたのも束の間、入れられっぱなしだった映次の指が、更に深く差し込まれた。もう一本指が増やされ、先程から散々弄られて敏感になった部分を執拗に擦られ、累は頭を振る。
「映次、やめ……ぅあっ!」
「やめない」
「やっ、あ! ……そこ嫌、ほんとにやなんだって、ぇ……っ」
 情けなくも声が湿る。
 映次と恋人になって、初めて触られた場所だったが、本当にそこを触られるのは苦手なのだ。
 男は性器の他にも感じる場所があって、体の中にあるその部分はそのうちの一つなのだという。けれど、そこを愛撫されると、射精を伴う慣れた快感とは違う感覚にいつも襲われた。それなのに、体が反射的に強張って言うことをきかなくなる。だから、好きじゃない。
 下腹も張って痛くなるし、なんだか粗相をしそうな感じもして不安になり、胸が潰れそうになるから嫌だ。
「映次……、や、抜けよ……抜けって」
「累」
 宥めるような響きを持った声で名前を呼びながら、映次の指が累の体を暴こうとする。敏感な部分に触れられて、累はひっと息をのんだ。
 腰が逃げを打って自然と上がり、ふるふると震えだす。
「もうや……」
 唇を噛み、累は顔を逸らす。波立つ目の前のシーツがぼんやりと滲んだ。
 映次の肩に微かに爪を立て、「嫌だ」と重ねると、無遠慮に中を蹂躙していた指がそっと抜かれる。
「……ぁ……」
 息を吐いて見上げれば、映次が苦虫を噛み潰したような顔で嘆息した。そして、覆いかぶさっていた体を横へとずらす。
 視界が開けて、ほっと胸を撫で下ろしていると、映次は「あーあ」と大きな嘆声を上げた。
「ほんと、累は狡いんだから。……泣く子には勝てないでしょ」
「だ……っれが泣いた!?」
「累でしょ」
 呆れたように、けれど優しく言葉を重ねて、映次が身を起こす。そして、床に落ちていたシャツと下着を拾って身に着け始めた。
「あれ、映次はまだ……」
 ちらと彼の腰元に視線を送る。
 累とは違い、まだ一度も達していない映次のものは張りつめていて苦しそうだ。
 今度は自分の番だろうと手を伸ばしたが、触れる直前で手首を掴んで阻まれる。瞬きをして映次の顔を見れば、重苦しい溜息が落とされた。
「……しなくていい」
「なんでだよ! お、俺ばっかりあんな恥ずかしいかっこさせられたんだから、お前だって……──」
 不意に投げられた視線に、累はびくっと身を竦める。
「……恥ずかしい、ね」
 いつもよりも一段低い声で言って、映次が累に一瞥くれる。その眼光の鋭さに気まずくなって、累は思わず視線を逸らした。また、溜息が聞こえよがしに落とされる。
「別に無理しなくていいよ」
「無理って、俺は別に……映次!」
 累の手首を離し、映次はさっさと立ち上がって部屋を出て行ってしまう。一度も振り返らないまま、音を立ててドアを閉めてしまった。
 ──なにあれ……。
 折角やってやると言ったのに、なにを臍を曲げているんだとむっとした。
 イライラとしながらタオルで後始末をしていると、映次が戻ってくる。
 股間の様子から察するに、どうやら一人で抜いて来たらしい。それにまたかちんと来てしまう。
 ──そりゃ、俺は不器用だけど。俺より自分の手のほうがいいってことかよ。
 それはあまりに恋人甲斐がないんじゃないのかと、累は映次を睨みつける。
 やけに腹が立ってしまうのは、己の気まずさの裏返しでもあることは、自覚していた。
 だが自分ばかりが痴態を晒し、映次は自己完結してしまうなんて狡いとも思ってしまう。
 そんな不満を露わにしたせいか、映次は眉を顰めて、こちらへと歩み寄ってきた。真剣な面持ちでベッドに腰掛けるなり「座って」と命じて来る。
 素直に聞くのも癪で、累は少し距離を取ったところに胡坐をかいた。
「累。俺と付き合って今年で何年目か覚えてる?」
「……覚えてるよ。馬鹿にすんな」
「してないよ。何年?」
 答えてと、やけにフラットな声で話しかけられ、いつもと違った様子に動揺しながら口を開く。
「……五年」
 お互いに相手が初めての恋人で、喧嘩も時々しながらもそれなりに仲睦まじくやってきたと、累は思っている。
 改めてそんなことを問われると、映次は違ったのだろうかと不安になり、ちらりと恋人の表情をうかがった。映次はいつも通りの穏やかな顔をしている。
「そう。五年。で、ベッドに一緒に入ったのは何回?」
「覚えてねえよ、そんなの。映次はいちいち数えてるのかよ」
「数えてないよ。……つまり、それくらい何度もこういうことをしてるわけでさ。──どうしていつまでもさせてくれないの?」
 その言い草にむっときて、累は映次を睨みつけた。
「──それは俺の科白だ!」
 累が絶叫すると、映次はぱちくりと目を瞬かせる。
「……えっと、累は俺に入れるつもりだったの? まだ?」


気になる続きは2015年9月15日発売フルール文庫ブルーライン「上下の沙汰もネコ次第」でお楽しみください。

前へ ← 1 2
▲PAGE TOP