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ブルーライン[鑑賞倶楽部]

WEB掲載分に書き下ろし&山田シロ先生のイラストを加えて文庫化決定! 鑑賞倶楽部

マキ

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【お試し読み】鑑賞倶楽部

 いい眼差しをしていると思う。写真でも分かる。あの男を思い出させる、そういう鋭い眼差しだ。
「由加里は次の予約が入ってしまいまして、最長でも一時間しかお付き合いできません。よろしいですか?」
 つまり一時間以内でマスターベーションに満足しろよ、という下品なことを真崎は言っているわけだが、そうも上品に表現されてしまうと逆におかしくなってしまう。訓練されているのだろう、彼はいつでもオナクラのスタッフであるとは思えないような丁寧な言葉を使う。高級ホテルのエグゼクティブフロアカウンターみたいだ。
 笑って返した。どんなに取り繕おうとここはオナクラだ、この程度でいい。
「よろしいです。三十分もかからないよ」
「ではご案内しますので。どうぞ」
 立ち上がった真崎にいつものように鞄を持たせて、部屋を出る彼のあとに続いた。
 階段でも廊下でも会話はない。他の店に行ったことがないのでよく知らないがオナクラなんてところはこういうものなのだろうか。
 もう慣れてしまった二階の部屋の前で真崎は足を止めた。かつては客間だったのだと思う。この店は、客が待つ部屋にキャストがまわるのではなくキャストが部屋を持っている。いかにも会員制高級クラブといった体だ。
 真崎はドアを二度叩いて、一之瀬様です、とよく通る声で言った。様、のあたりが居心地悪いがこの店はそういう体なのである。
 それから数秒置き、返事は待たずに真崎はドアを開けた。ドアの向こう、カーテンから隅に置かれた花瓶まで豪奢とさえ言ってもいいくらいの洒落た客間で、二人がけのソファの中央に座った由加里がこちらを認め、眉を上げ眼差しを突き立ててきた。
 歳下なのだろうがいけないお姉さんという表現が似合う婀娜っぽい女である。素人風の女が好まれるらしいオナクラのキャストとしては珍しいのだろう、酸いも甘いも噛み分けてきました、そういうイメージだ。
 何よりそのシャープな目つきがいい、非常にいい。写真で見るよりなお、そしてこの部屋へ訪れる回数が増すごとに強くそう思う。似ている。やっぱり似ている。だから幾重にも幾重にも重ねてしまう。
 はじめて恋をした、あの男に。

続きは2015年6月15日発売フルール文庫ブルーライン「鑑賞倶楽部」でお楽しみください。

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